金剛山を走る

38線の北 金剛山を走る

竹田 昭彦
第5回金剛山マラソンを走る(38㎞付近)、背景の山並みが金剛山=2005/12/19
 2005年の2月19日(土)開かれた、第5回金剛山マラソン大会を走りました。
 金剛山は、朝鮮半島の東海岸の38度線の北で、北朝鮮に位置します。最高峰は1638mです。
 金剛山の山並みは 1万2千の峰々が連なり、金剛石(ダイヤモンド)のように光り輝くと呼ばれ、朝鮮半島の名山です。
 現在、金剛山地域は、韓国の人達が公に北朝鮮へ入国できる観光特区です。
 韓国から、毎日800~2000名の観光客が出入りしています。
 日本は、北朝鮮と国交がなく、「拉致問題」をはじめ、分かりにく事が多いです。
 38度線通過は、厳しいだろうと覚悟していました。
 ソウルから、韓国のランナー達とバスで東海岸へ行き、38度線手前で韓国からの出国手続きをしました。
 そこから、専用バスに乗り換え、南と北を結ぶ国道7号線を通り38度線へ向かいました。専用バスは、韓国から集まった観光客を含めると、21台も連ねる賑わいでした。
 38度線でのチェックは、ありませんでした。予想外で、ビックリしました。
 38度線を通過すると、韓国の人達は、座席から身を乗り出し、北朝鮮の風景を見ていました。同一民族の思いが伝わってきました。風景は、南の雪景色の山野と同じです。違うのは、道路の両側に高さ2m半位の金網がある事と、武装した警備の軍人が所々に立っている事でした。
 入国手続きは、38度線からバスで20㎞ほど走った、宿泊するホテルの前でした。型通りの審査で、余計な心配は不要でした。北朝鮮滞在中(2泊3日)は、顔写真付きの入国許可証を、常に胸にかけるシステムでした。
 マラソン大会は、韓国の旅行社の現代アサンとランナーズクラブが主催と運営をしており、ランナーは韓国が主です。北朝鮮のランナーは、いませんでした。
 種目は、フル、ハーフ、10kmがあり、150名ほどでした(フル50名)。
 コースは、泊まった長箭港の「ホテル海金剛」前からスタートし、金網付き国道7号線を38度線の方向へ走って折り返し、31km過ぎから金剛山の中腹へ5kmほど上ります。
 中腹で折返し、下った温泉地の「温井里」がゴールです。31kmまでの金網付き道路では、撮影禁止だったが、金剛山の上り下りは金網がなく、自由に撮影できました。
 天気に恵まれ、金剛山の峰々は輝いて見えました。
 マラソンコースの前半に、国道7号線を38度線の方向へ走っていた時、38度線先の韓国の東海岸の都市「束草まで60km」などと、順次書かれた道路標識が有る事に気付きました。この国道7号線が、38度線を越え南の韓国につながっている事を示している訳です。私は、これを見て、「北も、南も、思いは同じ」、と実感しました。
 大国の都合に巻き込まれ、分裂国家にされ、その回復は困難きわまる様ですが、この道の金網と軍事緩衝地帯が取り払われ、鳥のように往来できる日が、必ずくると思いました。ゴールのタイムは、5時間7分31秒でした。
 なお、このマラソンに参加するには、日本からマラソンツアーがあります。
 マラソン参加の概略は、日本からの一般のマラソンツアーでソウルへ行きます。
 そして、ソウルで「韓国のマラソンツアー」に乗り換えます。
 北朝鮮入出国のビザ手続きは、韓国の旅行者が代行します。
 今回は、日本からの申込が3名あったそうですが、参加したのは、私だけでした。
 ソウルから日本語を話す世話役が一緒でしたので、ハングル後語が話せなくても間に合いました。
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